「テレジーンに捧ぐ」によせて

2000/01/27
テレジーンに捧ぐ

 人間らしく生きるための最低限の条件さえうばわれ、明日の命の保障もない強制収容所の中で、音楽を愛し、音楽に希望を託し、音楽に命を込めた人々がいました。

彼らの心にモーツァルトやベートーヴェンがどのように響いたのでしょうか。そして彼らの残した作品は、間もなく21世紀を迎える私たちに何を伝えようとしているのでしょうか・・・。

テレジーンの芸術活動を通して、音楽の素晴らしさをもう一度考える、そんな時をともに過ごせたらと思います。

志村 泉


2年前の初めてのテレジーン訪問より、この春のテレジーンでのコンサートの実現までを振り返りますと、何か不思議な力で後からあと押しされて、こ こまで来たような気がするほど、テレジーンと私達の結びつきは強いように思えます。ピアノを贈りたいということも、私達の中から自然に湧き上がってきた気 持ちなのではないでしょうか。

私個人としては、フラトウさんの素晴らしい活動を支援する意味でも、是非これは実現させたいと思っています。ただ、ピアノを物として贈るのではなく、私 達がテレジーンの多くの犠牲者の方々に心を運び、冥福を祈り、残された芸術作品を生かすことで、また彼らの命も生かされる、そのために役立てられるピアノ として送ることができたらと思います。

これから私もできるだけたくさんのコンサートでクライン、またウルマンの作品を紹介しながら語っていこうと思います。

1999年9月 志村 泉