日本でのパズデラさんとのデュオは、4年半ぶりになります。その間にパズデラさんは、第一ヴァイオリン奏者としてシュターミッツ・カルテットのメン バーとなられ、信じられないほどの数のコンサートをこなしながらソリストとしても大活躍される、という生活を送られるようになりました。カルテットで来日 された折、私もその活躍ぶりを客席から拝見したのですが、1997年に初めてお会いしたときに感じた、音楽に対するひたむきさに何の変わりもなく、カル テットのお仕事がますますパズデラさんの音楽を、豊かなものにしていると思いました。
今回は2つのプログラムを聴いていただけることになりましたが、どちらも実によくできたプログラムと言えると思います。
まず今年が没後、100年となるドヴォジャーク、そしてスメタナ。つまりパズデラさんのお国、チェコの音楽をたっぷり聴いていただけること。
そしてモーツァルトとシューベルト。これは前回ベートーヴェンの「春」を聴いていただいたように、古典的な作品を私達の演奏で、また新しく聴いていた だけたらという思いがあります。シューベルトの「幻想曲」は、ヴァイオリンとピアノのための作品の中でも大曲中の大曲、名曲中の名曲と言えるものの一つ で、パズデラさんも非常に大事にしていらっしゃる作品です。モーツァルトのK. 454は「モーツァルトのヴァイオリン・ソナタを入れるのだったら、一番美しいこれにしたい」というパズデラさんの希望がありました。
そしていわゆる「現代作品」と言えるもの。何と言ってもパズデラさんのために書かれた林光さんのソロ・ソナタ。今回は完結版の日本初演になります。こ れも当然のことながらパズデラさんが大変に力を入れて準備していらっしゃるもので、3月にヨーロッパで演奏し、そして日本に持っていらっしゃいます。私と してはもう一つの林光作品、「小品六つ」も楽しみです。沖縄の童歌を素材にした作品は、今までたくさん弾いてきましたが、これもその一つで、パズデラさん のヴァイオリンとピアノでどんな音楽になるのか興味深いところです。シュルホフはたぶん日本初演でしょう。強制収容所で命を落としたユダヤ人作曲家の作品 です。
とにかく私にとってのスメタナの「わが故郷より」以外は、すべて今回初めて演奏するものばかりで、この準備は「とてつもなくたいへん」なのですが、なぜか「とてつもなくしあわせ」な気持ちでいられるのは、すべての作品が余りにも魅力的である証拠だと思います。
百花繚乱の春にふさわしい、美しく、力みなぎる音楽を聴いていただけることと思います。
2004年1月 志村 泉